白い吐息

「ぇ……」

突然のことに驚く琴。

真人の熱い胸の中で琴の体温も上昇する。

「かっ…からかわ…ないでよ…」

ドキドキしながら震える声で言う琴。

「だから、からかってないって言ったじゃん」

真人はボサボサの琴の髪を優しく撫でた。

真人の言葉を聞いて、琴はおとといの生物室での出来事と昨日の戸部の言葉を思い出した。
彼は自分に好意を持っているかもしれない…と、いうこと。

「…白居…くん…」

琴は顔を上げ、真人を見上げる。

本当なの?―


ぎゅるるるる〜


「…あっ」

琴のお腹から7つ目のアラームが鳴り響いた。
つまり腹時計である。
色んな意味で赤面する琴。
真人はプッと吹き出して、琴を抱きしめていた手を離す。

「先生、やっぱ可愛い」

口を押さえてケラケラと笑う真人。
腹を押さえる琴はしばし放心状態に陥った。

「…支度するからアッチ向いてて」

やや落ち込み気味に琴が言った。

「支度?」

「コンビニ寄って学校行くの。朝食の材料何にもないから…」

「ふーん」

「白居くん」

「はい?」

「やっぱ先に学校行ってて…」

琴はドアを指さした。
その表情はどこか切なそうだった。

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