なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
抱きしめてくるトーヤの腕から、伝わってくる。
力が
体温が
想いが。
切なくて、痛いくらいに。
「来てくれて、嬉しかった……」
「今日の試合、絶対亜子に見て欲しかった。」
「亜子に、かっこいいとこ見せたかった。」
トーヤ。
…もう、いいよ。
「なぁ、亜子。」
トーヤ。
それ以上言わないで。
「…今日の俺さ、琢斗に追いつけてたかな――」
――――――――
それは、あんたの初めて見せた弱音。
そして、本音。
私たちは、嘘の中に本音を隠す。
だから私も。
へたくそな嘘の中に本音を隠す。
「私、琢斗のことなんて好きじゃないよ。」
好きじゃない。
大好きだから。
好きよりもっと、
好きになっちゃったんだ。
苦しいくらいに…