なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?

「もういいよ…これ以上お前の口から何も聞きたくない。」


俺の顔には、もうなんの表情も浮かんでいなかった


『情けねぇ…』


これは、あいつに向けた言葉じゃない。


あいつがいくら嘘をついても、俺がどんなに夢乃を思っても、夢乃が俺を好きになることはない。


それが分かっているからこそ、情けない。


今一番格好悪いのは、きっと俺だ。




琢斗を一人残して、俺は教室を出る。


帰り際、足早に廊下を走り去っていく後ろ姿を見た。


その小さくて危なっかしい後ろ姿は、紛れもなく俺たちが好きで、好きで、どうしようもないあいつ。


もしかしたら、俺達の話を聞いていたのかもしれない。


でも、不思議と聞かれてたらどうしようとか、マズいとかいう気持ちはなくて


むしろあいつに聞いていて欲しいと思った。




今まで抑えこんでた俺の気持ちも、言葉にしなかったら、なかったことにできるなんてのは間違いで。


なかったことになんてできないんだと気づいた。


だからお前に気づかれた今、俺はたぶんもう、遠慮はしないよ。


遠慮しない。


琢斗、お前にも。



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