幸福論
「嘘ぉ…、マジなん…?
幸谷先輩って、マジカノ作らへんって…有名やったのに。
なんで、なんよ。」
涙目の斎藤さんになす術もない私。
「仕方ないやん。
幸谷先輩が、愛子の事好きなんやから、愛子に言うてもしゃーないやろ?」
キッと私を睨んだ、斎藤さんがスカートをギュッと握りしめた。
「ウチ、中学の時からずっと、好きやってんもん。
幸谷先輩の事、ずっと、好きやったのに。
なんで、こんなこの間こっちに来たような子に、幸谷先輩取られやなあかんの。」
苦しい。
只ならぬ雰囲気に教室中の視線がこちらに向いてる気がした。
ヤダ…よ。
「八つ当たりすんのヤメなよ。
愛子は全然悪くないから。」
「…なんかムカつくし。」
そう私に言葉を吐き捨てた斎藤さんが、自分の席に戻った。
呆然としたままの私。
「ほら、愛子、おいで…。」
私の手を引いてくれた沙穂ちゃんの優しさと、斎藤さんのキツイ言葉の上にある切ない瞳に、苦しくなった。
恋って、こんなに切なく胸を痛めるものなのですか…?
そんな恋なんて、知りたくありませんでした…。