幸福論
「そうなんだね。
でも、あたしもお天気のいい日は、駅まで自転車なんだよ。」
「そっか(笑)。」
何となく視線が絡んで、何となく笑い合った瞬間…
「愛子、なんしてんの?」
頭の上から聞こえた不機嫌な声。
「あ、幸谷君。」
私の手に持っていたバッグを奪うように手に取った幸谷君が、私の手を掴んで、歩き出した。
「え、あ…、七原くん、またね?」
「あ、ん、じゃ」
戸惑う私を余所に幸谷君はバイクの傍に私を連れて来て、不機嫌そうに眉を顰めたまま、ヘルメットを差しだしてきた。
「被って?」
「…うん。」
「鞄、ちゃんと俺と腹の間に挟んどいて?」
「…うん。」
私はパーカーを羽織ってヘルメットを被った。