ALTERNATIVE Ver.0.5
通路の奥の扉の前には、老人がいた。

9割5部。十中八九トイレを待っているのだろう老人を100%じゃないのはこの男の希望のようなものか、老人は仁丹を今まさに食わんとしていた。

これからトイレに行くような人間が仁丹を食べるのだろうか?いや、たべない!

そもそも仁丹クサイ老人というのはよくいるが、仁丹をほうばる老人は、今日はじめて見た。という顔をしていると

「お客様」

と、まだ注文すらしていないのに眉毛の濃い店員は男を、そう呼んだ。


飲食店におけるギブアンドテイクとはお金を貰うそのかわりに、食べ物と場所を提供する。食べるだけ食べてウンコをしないお客様もいるのに、お金も払わないうちからウンコをしようとしているこの男のことを

「お客様」

と、そう呼んだ。

お金も、もらってないのにもかかわらず!


眉毛の異常に濃い、おや? もしかするとさっきよりも更に眉毛の濃くなってるような気がする店員は、「当店にはトイレは1つしかございません……」というようなことを天井を向きながらハキハキと説明し「この近くにトイレはないのか?」という男の問いに対して、またもや天井を向きながら指さした。

その指先のしめす方向へと男は話の途中にもかかわらず向かった。

接客業務があんな態度で、成立するのだろうかと小首をかしげながら。

「くそったれがっ!」

おれはただ糞がしたいんだよ!


ザッ ザッ ザッ


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