++外伝/偉大な緑の協力者~『選択』~++
「変わりはないか?」

 ベリルはまず二人の半年を尋ねる。昔なら監視の意味だったが、今は純粋に知り合いとして、友として……

「夜更かしが多いのか、遅刻するとか言って、慌てて出て行く日も多いですが……」

 苦笑いを見せながらも、レイは嫌そうな顔をしてはいなかった。その姿に、父親として生きている証のようなものがベリルには確認できた。


 暫くの雑談の後、ベリルは今日の本当の目的の話をする。

「各国に、病院拠点が無い地域があってな……」

 ベリルを含め傭兵はいろいろな場所に知り合いや拠点を置く。そして日々、人を助けたり戦いに身を置いたりしている。病院も無いより、有った方が当然良い。
 
 そしてベリルの場合は、自身の“事実”を承知で信用出来る人間という条件も。
 その言葉だけで、言いたい事を感じ取ったレイは少し困った顔を見せている。


「個人の診療所規模でかまわん、お前に頼みたくてな」
「し、しかし私は――」
「お前は信用に値する人間だと私は思っているが?」

 言い返そうとしたレイの言葉を遮ったベリルは少し厳しい顔を見せる。


「過大評価する気は無い。しかし、お前の六年間を私が知っている」

 レイは言い返す言葉に困って、無言になってしまった。
 
 ベリルは監視の意味もあり、逃げ出さないかレイを見張っていた。――不死なのだから。

 三十歳手前の研究しか頭にない人間が償いと言う言葉だけで、自分の本当の子どもでもないというのに六年の月日を過ごした。恋の一つもせず、十歳の子どもを必死に育てた事をベリルは知っていた。
 血の繋がりが無くとも、本当の親子になろうとしていた事を誰よりも見ていた。

「国内でと考えている。それに今すぐと言う訳では無いから――」
「それが償い。いえ、貴方に恩返しとなるのであれば、この先そうするべきですね」

 レイは、ベリルの言葉を遮るように答える。今回の言い渡しは、償いや命令では無いと捉えての答え。

 しかし義務教育過程だけは、アザムの馴染んだ今の場所で受けさせてやりたいと考え“この先”と付け加えた。

 それを“アザムの事を理解したうえでの提案”だとベリルは付け足した。だからこの話はもう少し先になってから相談する事を約束する。
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