冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
気付くと、
日は傾き、辺りは夕暮れ色に染まっていた。
秋を感じる冷たい風が吹き抜ける。
「実織様、風が冷たくなってきました。お部屋に戻りましょう?」
私が実織様を屋敷に促すと、
「あ!ちょっと待って、静音さん」
そう言って、庭の片隅の花壇に駆け出す。
「いかがなさいました?」
不思議に思い、実織様のあとを追い尋ねると
「この花、少し摘んでもいいかな?」
私を振り返り、笑顔を向ける実織様。
その可愛らしい表情に、
何も考えずに、えぇ、とうなずいてしまった。
ハッ、私としたことがーー