ほら、笑って笑って
「それは…」
言葉に詰まる。
さっきキスされた時、まだ好きなんだって思った。
決して無理矢理キスされた訳じゃないのに、近づいてくる常務を拒めなかった。
「…正直……まだ好きだと思います……でも」
「でも?」
でも、だからといって、不倫を続けたいとは思えない。
「……社長との夫婦仲が上手くいってるって分かって、ショックで、不信感がむくむくと出てきて……今は、常務に何を言われても信じられないです。
まだ好きかもしれないけど、信頼出来ないし、もう愛せないです。」
それは複雑な心境。
言葉にするのが難しい。
自分でもどう表現したらいいのか分からない。
ただ、未来のない関係を続けられないと、私は決意したから。
だから、常務に会わなければ、きっとこの恋を忘れられる。
そう思う。