水とコーヒー
「うん、そしたら、そこまで辿ってみましょうか」

「え?辿るって?」

「んーと…簡単な催眠術みたいなものよ。あ、大丈夫よ、別に無意識の間にどうこうとかそういうことじゃないから。っていうか、そんなのできないしね(笑)」

「はぁ…」

訝しげに首を傾げながら生返事をする僕に対して、先輩は少し困った様な表情をしながら説明する方法を考えているようだった。

「えーとね…占いっていうか…なんだろうな。私の一つの方法なのよね。うーん、なんだろう。私って、見えるけれど、底の方まで見透かして見えるわけじゃないのよ。だから相手の協力が必要になるのよね」

「はぁ…」

「例えば今の貴方だけど、見えるのは見えるんだけど、それがなんなのかはわからないの。わかるのは貴方にあまりよくない影響を及ぼしているっていうことだけ。宗教とかやってるわけじゃないから、いわゆるお祓いみたいなのを期待されても、それはできないのよ。ご供養とかそういうのもよくわからないし」

“私”、“貴方”。いままで“あたし”と“キミ”だったものが変わっていた。今まで僕の目を正面から見て話をしていた先輩は、今は僕の目を見てはいるモノの「その向こう側」をも見ている様な表情をしていた。

ああ、始まっているんだ――僕は直感的にそれを悟った。
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