ビター・ビター・チョコレート
卓真が5本目のタバコに火を点けた。




「ふーう。あのなあ。思い出を無理に塗り替えるんじゃなく、増やしていけばいい。今のお前にできる事は、それだけだろ」




そう……彼女の、慧人との思い出を塗り替えるのは無理だ。



思い出を増やす。




少しでも一緒に過ごして、少しでも彼とは違う思い出を……。




「卓真って、やっぱ良い男だね」



「女どもにも、その台詞吐かせたいね。まー、俺はさ、一応、お前らよりも二年間先に生まれて多く生きているからな」




「それ……あまり自慢にならないよ?」



「余計なお世話だ」




美琴に謝ろう。



ちゃんと向き合おう。




もう一度、彼女に告白をしよう。



目を見て、好きって伝えよう。




俺の恋愛は、まだ幼稚かもしれないけど。



それでも一生懸命だった――。
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