ふたりごと


どうしよう。
どうしよう。


でも、だけど。


私には忘れられない人がいる。


だからそれでも松崎くんに会ったら、彼にとても失礼なことをしていることになる。


しばらく恋愛はたくさん。


もしも松崎くんとうまくいっても、また気がつかないうちに彼の心は離れていくに違いない。


恋愛をするのが怖い。
信じることは、難しい。


「私には忘れられない人がいます」


思い切って正直に気持ちを打ち明けると、松崎くんは真剣な表情のまま


「忘れられないなら、忘れない方がいいですよ。そのままで構いません」


と言った。








忘れない方がいい。


そんなこと、思いつかなかったから驚いた。


誰もが「忘れなよ」と言うのに、彼は本当に不思議な人だ。




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