火の雨が降った後
「お…ばちゃん…?まさこおばちゃん!?」


踵を返しおばちゃんの名前を叫ぶが、返事はない。


人の波が私の体を後ろに後ろに押す。


「まさこおばちゃん!?」


流れに押し戻されながら、もう1度名前を呼ぶと、人の頭の上から手を振るのが見えた。


その手には、おばちゃんが息子さんからもらったと言っていたハンカチが握られている。


良かった…。


最悪のことだけが頭に広がっていた私は、その場にしゃがみこみたいくらいに安心した。


十字路の所で待って合流するしかない。


とてもじゃないけれど戻ることができない状況。


私は前に向き直し、また人の流れに乗って歩き出した。
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