【花集】恋の打ち上げ花火
「もう、ジウさんたら、冗談はそのくらいにして、行きましょう!」

わたしはなんだか恥ずかしくて、豊海園入り口へと先頭切って歩き出した。

「ラジャー、タイチョウ、オトモシマス」

そんな呟きが聞こえて、双子をぶら下げたジウさんが、わたしの横に進み出た。

「マキ、オモニミタイネ」

「オモニ?」

「ソウ、オカアサン」

「やだ、ジウさんてば、あたしまだ十七ですよ。褒め言葉とは受け取れません」

わたしはちょっとむくれて、頬を膨らませて見せた。

「オレ、ヒトヲホメタリシナイ。ゼンブホントノキモチ」

デッカマッチョのジウさんは、前歯の一本抜けた真っ白い歯を見せて、やっぱり不敵に笑った。

コインロッカーに荷物を預け、男女別の更衣室に向かう。

「オマエラハコッチ!」

あたしに付いて、女子更衣室へ入ろうとした双子の襟首を掴んで、ジウさんが言った。

「でも、着替えが……」

「コイツラモウオオキイデショ、ヒトリデデキル。アマヤカスノヨクナイ。ナ」

「「ジウと行く!」」

すんなり、ジウさんに従って双子の姿は消えていった。

わたしは一人残されて、なんだか妙な気分。

いつもは、双子のお守りに振り回されて、自分を構う余裕なんてなかったから。
< 5 / 31 >

この作品をシェア

pagetop