RUN&GUN
「店の奥って、上客用の品とかを置いてるだけかもしれないわよ?」

「ええ、まぁそうなんですけど。でも主人が、そこから出てきた途端、やたらと辰巳を気にしてましたし。それに、一緒に出てきた客は、陰間(かげま)ですよ」

陰間とは、早い話が男娼のことだ。
藍は、うげっと舌を出し、端正な顔を歪めた。

こういう殺し稼業の者は大抵がそうだが、藍や与一も、醸し出す雰囲気で、その人の仕事がわかる。
同じ稼業に限っては、気配を殺すことは基本なので、一流になればなるほど、わかりにくいが。

「ただ単に、下駄を買いに来た陰間かもしれないけど。でも、何か店自体が怪しくなってきたわね。店の奥と、あと二階を調べたい。単なる居住地なのかしら?」

藍の目が光り、眼下に広がる京処を眺めた。

「奥方にも、接近したいですね」
< 90 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop