出会い・白輝伝

妖狐

時は戻り三日前。
住宅が続く東京郊外の
松ガ原町内 まだ人も
車も通らない早朝 。

朝霧に紛れアスファルト
の車道を横切り去る
六~七才の男の子が一人。

手に大事そうに、何か抱え
息を弾ませ走って行く。

やがて子供は
「バイパス道路工事
の為一般人立ち入り
禁止」と書かれた看板が
立て掛けられた
工事現場へと立ち入る。

ジャリ道のあちらこちら
に掘り上げられた土砂が、
小さな山を造っている
脇を走る子供は、足が
悪いのか少し右足を
引きずっていた。

サイズの合わない
薄汚れた大きな
半袖Tシャツに
半ズボンを身につけ、
痩せ細った手足に
バサついた髪毛・頭上
には尖った耳が、
お尻では艶の無い
薄茶色のしっぽが、
走るリズムに合わせ
右へ左へと揺れていた。

走りづらい道を小走り
に走り抜け、子供は
ススキや雑草が生い
茂る草むらの先にある
林の中へと進んだ。
奥には今では参る者
も無く見捨てられ
朽ち果てた小さな
稲荷社があった。
その傍らに立つ大きな
楓の老木を目にした
子供の顔にやっと
安堵の笑みが浮かんだ。
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