ワタシ


間もなく、クラスが貼り出されているところに着いた。


しかし、先生たちが、クラスの名簿を剥がす作業行い始めていた。


とっさに駆け寄り、息を切らして声を絞り出す。


「せ…先生!まだ…見てない…!!」


声をかけたのは、体育の先生で、生活指導も担当している。


だから毎朝門の前に立っていて、毎日ギリギリのワタシはよく絡まれていた。

でも、面白くて優しいから、マシな部類に入る。

「あ゛??今日もギリギリか?!ッたく仕様がねぇなぁ。」


先生はため息をつきながらもワタシの名前を手早く探してくれた。


やっぱり、なんだかんだでいい先生だ。


「…おッ、あったぞ。名取は6組!!」


「先生ありがとぉ!!大好き!」


わざとらしく満面の笑みを浮かべる。
それに、少しほっとしたのもある。


「今年くらい早く来いよ?今年が最後なんだから!」

―“最後”なんだから―


この言葉は、ワタシの心の中に、寂しさを刻んだ。


この言葉を聞くと、なんだか悲しくなる。


今が遠く離れていく。


そんな気がして、寂しさ、悲しさと同時に、恐怖を覚えた瞬間だった。


ヤダ。
最後とか。
もっと…もっと
今が今であって欲しい。
未来なんて
考えたくない。
最後だなんて
意識したくない。
“最後”なんて
出ていけ。


思いっきり“最後”を拒絶した瞬間でもあった。




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