幼馴染みの初恋
いいから!話しあるんだろ?」
母親は一呼吸おいて今度は落ち着いた声で電話の向こうにいる息子の白夜に話しかける。
「あんた、海外で暮らす気ない?」
きた…。前から誘われると思っていたが、こんなに早く誘われるとは俺は思っていなかった。
「なんで?」
白夜は興奮気味で母親に声を張る
「こっちが思ったよりも忙しくて、いつそっちに帰れるか分からないくて…それに…」
香絵は10分程話しを続けた。
香絵が言うには、この海外での仕事は失敗できないらしい。それで仕事の進み具合が資金不足やらでよくないので、何年かかかるかもしれない、だからこのまま白夜を一人で日本に置いておくのは心配だから一緒に住もうという電話だった
「急に言われても…俺にだって色々あるし…」
香絵は溜め息を吐く。
香絵の溜め息と一緒に周りの音も混ざって聞こえてくる。
「あんた、どーせ今頃ユイちゃんに恋心が芽生えて迷ってんでしょ?

当たり…。お前は何故そこまでわかる…
白夜は声が出そうに慌てて口を塞ぐ

「小さい頃の二人見てればわかるわよっ!伊達にあんたの母親やってる訳ぢゃないのよん♪」
香絵は見えない相手にVサイン。
「だよなぁ〜」
あら?やっぱり当たり?」香絵は声のテンションが上がる
騙されたぁ…白夜のこの言葉は心の響きとなった。
白夜は香絵に遊ばれている 「いい加減にしろよなっ!こっちは真剣なのにさっ」
香絵はビックリしている
白夜にだって母親の行動が少しはわかる…はず………
「はいはい、ならグズってないで早く告白しちゃいなさい!女は待たされるのは一番嫌いなのよっ!」
はぁ〜っ…何処の世の中に海外にいる母親からの電話で恋について説教される奴がいるんだよ…
キョロッ…
キョロッ…
はぁ〜っ…
俺だよなぁ…俺しかいないよなぁ…
白夜は母親との電話に疲れていた、いつも体調の事だけ心配してるのかと思っていたら、本当は俺の事何でもわかっていた。
「母さん…離れていても親子なんだな…」
白夜は少し涙ぐんでいた
「急に気持ち悪いよ…あんた!」
お前は空気を読めてねんだよ。
白夜はさっき思った事を頭の中から消去した。
さらば…香絵との短い思い出よ。

デリート…。ポチッ。


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