ジャクソンとマイケル
「チョ、何このイヌー。チョー、気持ち悪いんだけどー」

 可憐なサクラの口から出たとは思えない言葉たちとともに、マイケルの身体が吹っ飛んだ。どうやら、マイケルの腹を思いっきりサクラが蹴ったらしい。

 マイケルは、キャインキャインと苦しそうな声を出しながら床をゴロゴロしている。今は敵同士ではあるが、その姿はなんだか痛々しい。
すると、そこにユータが戻ってきた。マイケルが苦しんでいるのを見て、目を見開いて驚いている。

「マイケル! どうしたんだ?」

 マイケルの元に駆け寄ったユータの背中に、サクラの甘い声がかぶさった。

「マイケルね、まだ熱いのにユータ君の紅茶飲んじゃったの。ごめんなさい、止めようと思ったんだけど間に合わなくって……」

「そうなんだ。マイケル、ダメだぞ。次からは気をつけろよ。サクラちゃん、こっちのほうこそゴメンネ。気を使わせちゃって」

「ううん。でも、マイケル大丈夫そう?」

「うん。やけどはしてないみたいだから、しばらくすれば落ち着くと思う」

「そう、良かったー。マイケルに何かあったら、私ユータ君に合わせる顔がないもの」

「そんなことないよ。サクラちゃんは止めてくれようとしたんでしょ? だったら、聞かなかったマイケルが悪いんだから、サクラちゃんが気に病むことないよ」

「ユータ君にそういってもらえてホッとした」

「ううん。そんなことないよ」

 ユータの申し訳なさそうな、それでいてどこかしまりのない笑い顔からは、サクラの言葉を露ほども疑っていないのがわかる。まあ、惚れた弱みとでもいうんだろうか?

 それにしても、マイケル、本当に大丈夫か?

 どう考えても、あの苦しみようは熱いお茶を飲んで起こる苦しみ方ではない気がするんだけどな。まあ、でもこれで敵は一人減ったということだ。悪く思うなよ、マイケル。

 とはいえ、実はまだ妙案は思いついていなかった。さて、どうしたものか。とりあえず、近づかないことには始まらないので、マイケルをたたき起こしてサクラの側まで再び移動する。

 もう、このくらい時間がたてばマイケルもだいぶ回復していた。しかも、何を血迷ったのか変なことまで口走っている。
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