大切なこと
初めて知ったこと

乃愛の優しさ

「皆が辛いなら、社長が言ったんだとしても、認められません。」

「乃愛、やめなって。」

「いいの。ごめんね。みんなには、笑ってて欲しいの。鈴歌は帰ってていいよ。」

ある時、俺は聞いてしまった。


乃愛って言うのは、俺らのマネージャー。6年一緒にいる。

いつも俺らのことを考えてくれてる。

だけど、俺らにはこんなこと言ったこと無かったし、

怒ってる表情なんて見たこと無かった。

いつも、俺らの前では笑ってるから。だから、余計にびっくりした。

俺は、メンバーを集めて、この話をした。


「なんで、ここまでしてくれるんだろう。」

「しかも、俺らには何も言わないじゃん?」


そう。俺らには、何も言わない。毎日、笑って楽しそうに過ごしてる。

だから、俺らも笑顔になれるんだけど…。


「俺らって、このままでいいのかな…。」

「…いいわけ無いじゃん。」

それから、1時間くらいこの話をしていた。だけど、答えなんて出なかった。

コンコン…「入るよ?」

「乃愛?」

「どうしたの?そんなに暗い顔して。なんか嫌なことでもあった?(笑)」

ほら、また笑った。何も無かったかのように…。

たぶんさっきまで、泣いてたのだろう。

いつもより目が赤い気がした。

「ん?何でもない。乃愛が遅いから寂しかったの。(笑)」

本当は聞きたかったけど、さっき俺らで、言うまでは聞かないって決めたから、聞かなかった。

「そう?なんかあったら言ってね。」

いつも、こんな風に言ってくれる。俺らのことを心配してくれる。

優しく、でも確実に俺らを受け止めてくれた。

その理由を、まだ俺らは知らなかった。







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