Genius~守り人~
「…なんだよこの臭い…?」

「空間が開かれる…」

氷に言われるまで気付かなかった、辺りに漂うガス漏れの様な臭い

「氷!早く弥那を!

普通の奴は臭いをかぎすぎると動けなくなるし…これは毒性のもの…」

「何!?じゃあいそがねぇと…弥那行くぞ。
…弥那?」

來奈の袖にすがりついていた弥那が崩れおちる。

「…毒性なら…來奈も…」

苦しそうに肩で息をしながら、何とか身体を起こす。

「オレには効かない。

哀哭溜の刻印があるから…

…氷、これを使え。」

來奈は白い羽根を出して氷に渡す。

彼は頷くと、空中にそれを投げ隼人と弥那を乗せ、自分も乗り込む。

「南の大樹で待ってる。

後で必ず来いよ!」

「わかった。必ず行く。」

來奈は握られていた弥那の手をそっと放す。

「…來…奈…」

既に動けなくなっていた弥那はうっすらと目を開けて來奈を見る。

大丈夫、と微笑む彼女はどこか悲しげで、もう二度と会えない―消えてしまいそうだった。

ー…死んじゃ…ダメだよ…。

絶対……帰って…来て……

涙を流すと、弥那は気を失い氷に倒れかかる。

「氷、頼んだ。」


來奈は静かにそう言うと、ポケットから出した"防の符"を渡す。

そして四神の首飾りをつけると、受け取った呪符を握り締めトンネルを出て行く氷達を見送った。


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