フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
悲願の和解へ
 勇太に携帯電話を返してもらうと、麗はさらに私と勇太に近付いてきた。私の手の届きそうな距離で止まれば、カッコ良く肩にかかった髪をはらった。
 そんな彼女は、いつもの彼女だった。気高く凛々しい彼女だった。私はちょっとホッとした。
「おはよう、麗。今日は学校に来たんだね」
「家にいてもヒマだからね。時間つぶしに来たわ」
「体の調子はどう?」
「いたって健康よ。私、お金持ちだから、毎日良い物食べて体力つけているの。あなたたち貧乏人とはワケが違うの」
「そう、だったら良かった」
とたん、麗は視線を外し無口になった。何か考えているようだった。どうにか間をつなぎたかったが、あれやこれや考えすぎてうまくいかない。
(琴美、まだ来ないかなぁ…)
思わずあたりをキョロキョロ見回して琴美の姿を探した。
(電話でもしてみようかな)
手に持った携帯電話をギュッと握り考えた。
 すると、ふとある疑問が頭の中を過ぎった。
(そう言えば、さっき勇太君と麗、携帯電話で話していたな。なんで勇太君、麗の携帯電話の番号知っているんだろう?)
2人はクラス中どころか、今や学校中が知っている犬猿の仲だ。今まで取っ組み合いになりそうな激しい口げんかを何度もしてきた。ふつうならプライベートに関わる携帯電話の番を教え合う事はしないだろう。自宅の固定電話の番号さえ、教えたくないはずだ。
(どう言う事?もしかして、こっそり仲直りした?)
考えもしなかった事態にすっかり動揺した私は、気まずい空気を替えなければならない事をすっかり忘れ、ジロジロ2人を見た。
「美羽ちゃーん!」
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