フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
私は頬をプゥと膨らませた。
「さて勇太に関してはここまでにして、本日の練習メニューについて話す」
女子部員は『もっと聞きたーい!』と言ったが、新垣は無視して話しを進めた。宣言通り、部活を優先するようだ。女子部員のおねだりを振り切った新垣は、バドミントン部がシェアする部分、体育館の4分の1外周を5周してストレッチを終えた。私は、さっそく勇太に部の規律などについて教えようとした。
すると他の部員の動きが目に入った。みんなはこれまで通り、2人1組で打ち合いの練習をしていた。それを見ていた、ちょっとうらやましくなった。私も打ち合いをしたかったから。
(ダメダメ!ネガティブな事を考えていたら、嫌な女になっちゃう。本当に勇太君に相手にされなくなる)
「…あの、村瀬さん。どっか具合悪いんですか?」
「ううん、ぜんぜんっ!」
「無理してないですか?俺、今日は初日だから、見学だけでもかまいませんよ」
「本当に大丈夫。もうバッチリ!そう言えば、勇太君って呼んでもいい?同じクラスだし」
「もちろん!家族もアメリカの友達も、俺のことをずっと『勇太』って呼んでいたから」
「それと、敬語もやめてね。私がいくらお世話係とはいえ、同級生なんだから」
「ありがとう」
「オッケー。じゃあ、勇太君。さっそく部の規律について話すね」
「お願いします」
勇太はまたペコリと頭を下げた。何度見ても彼のつむじは可愛い。思わず見とれてしまった。
「むーらせーっ!いつまでレクチャーしてんだ。打ち合い終わっちまうぞ!」
「ご、ごめん!すぐ終わらせるから!」
ハッとして我に返ると、あちこちから聞こえてくるシャトルを打つ音に負けぬよう叫んだ。私の事をちゃんと待っていてくれた新垣の心遣いにホッとして。
 おかげで悩みは解消し、すがすがしい気持ちでレクチャーを終え、練習に望めた。勇太とも少し仲良くなれて嬉しかった。

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