センセイ
北校舎にある物理室は、夏の陽の傾きのせいで陰を作り涼しく感じた。
静かに開けた教室の扉。
センセイが職員室からここへ来る前に、私はいつもセンセイが使ってる準備室へと忍び込んだ。
電気をつけないままだと、ちょっと暗い感じがある場所だけど、ここには私の大好きなセンセイの空気が詰まってる。
センセイの長い白衣が、窓際でひらひらと遊ぶように風に揺れてる。
「…センセイ」
そっとその白衣に手を伸ばせば、まるでセンセイに触れてるかのようにドキドキした。
この感じに包まれたい。
この空間に閉じ込められたい。
センセイと一緒なら、この熱い夏の温度に溶けてしまっても構わない。