???
「怪しい気配は無いけどな。」
 ヨッタは辺りを見回す。


 街中は、週末にしては人影もまばらだが、闇夜を照らす眩い(まばゆい)程のネオン。ゲームセンターや居酒屋から漏れでる雑音。夏の夜を楽しむ集団や呼び込み、それ等の人々の雑踏で、そこそこの活気に溢れていた。

 だがザーラ星人を恐れてか、男性は数える程しか居ない。逆に考えれば、今街に居る男達は、ザーラ星人のニュースを見てはいないのだろう。

 それといやが応でも目立つのが、通路規制する、警官の集団だった。



「おい!ヨッタ、ヨッタじゃねーの?」
 不意に後方から聞き覚えのある声が聞こえた。
 その方向を眺めるヨッタ。…ツルツルがいた。

「……?!千秋さん?」
 ハゲてはいたが、同じ会社の千秋先輩だった。

「ようヨッタ。今日も酒が美味いな。…なんだ、ナンパか?若いな。今日は、貴ボン一緒じゃねぇのか」
 千秋は酒に酔って、ご機嫌だった。とてもザーラ星人に襲われたとは思えない。

「ちぃっす、千秋さん。どうしたんすか、その頭。あの“さらさらのロン毛”は!例のあざらしにやられたんすか?」

 千秋は何出弥製作所一のイケ面でヨッタ憧れの男でもあった。

「あざらし?何言っちやってんのよヨッタちゃん。これはさ、良くわかんねーけど、“庄屋”で飲んでてさ、トイレ行ったんだけど、なんか頭が、ぬるぬるするなーって思ったら、こうなってたんだよ。笑っちゃうだろ。まあこれはこれで散髪いく事無ぇから楽だしな。」
 飄々(ひょうひょう)と話す千秋。まるで他人事だ。

「でしょ。千秋さんハゲてても、すげー格好良いからいいすよね。…じゃなくて、ニュース見てないんですか?変なあざらしが、やったんですよその頭。それと、財布は無事なんすか?」
 千秋のペースに乗せられ危うく調子の狂いそうになるヨッタ
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