僕等は、それを恋と呼んだ。

知らない




「ねぇ、笈原」


次の休み時間。


あたしは笈原の席へ行く。



「ん?」


「嫌いな食べ物は何ですか?」



笈原の机の前にしゃがんだあたしは机に顎を乗せて笈原を見上げた。


あたしを見下ろして、ニカッと笑う笈原にキュンとくる。



くぅー。可愛い。




「野菜」

「じゃあ好きな色は?」

「黒、赤、黄色、青…?」

「じゃあ好きな動物は?」

「え。何、心理テスト?」



ははっと笑う笈原。



「違うもん。知りたかっただけ」



そんな笈原にムッとしながら、あたしは言う。




笈原が知りたい。




良いとこも、悪いとこも、バカなとこも、くだらないことも。


嫌いな食べ物も、好きな色も、好きな動物も。



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