アリスズc
∞
 ロジアの屋敷の庭には、伯母がいた。

 次郎を抱き、ハチにかまっているようだ。

 伯母は、桃の連れてきた客を確認すると、ハチを茂みへと下がらせる。

 余計な色気を出されると、面倒だとでも思ったのだろうか。

「これは夕日殿…」

 軽く会釈だけをする。

 素晴らしき頭の高さだが、伯母だけに何らおかしくはない。

「ほう、赤子か…誰の子だ?」

「私の子です」

「ははぁ、なるほど。それでお前さんの生気は、この赤子に吸い取られたわけか」

「それが生き物の常ならば、私は何ら困りません」

 夕日の棘を紙一重でかわしながら、伯母は暗に『余計なお世話だ』と言い返している。

 夕日が『王道』ならば、伯母は『正道』

 噛み合いそうで、絶対に噛み合うことのない二人に見えた。

「この屋敷の主人は、いい女か?」

 そして、あけすけな聞き方を伯母にする。

 桃にしなかったのは、彼女が若すぎたからだろうか。

 夕日は、全てにおいて不遜に見えはするが、実は微妙に言葉の選び方が違う。

 伯母に、これだけ奔放な言葉を使うのは、彼女ならばすべて満足のいく返しが出来ると思っているからなのか。

「いい女ですが……」

 伯母は、言葉を止めて夕日を見た。

 その視線には、やや信用ならない色が浮かんだ気がする。

「いい女ですが……つぶす気なら、いますぐお帰り頂きたいものですな」

 桃のぎょっとする言葉を、真正面から叩きつける。

「はっはっは、もはや私にはそんな力はない」

 頭も、こうだしな。

 つるつるの頭を、夕日は軽やかな音を立てて叩いた。

「どうでしょうね」

 伯母は。

 まったく、夕日の言葉を信用していないようだった。
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