アリスズc
∞
 もうもうと舞い上がる埃の中。

「エイン、ここを守れ! 桃、来い!」

 伯母が飛び出して来た。

 迷うことなく全速力で走る彼女に、桃は必死でついていった。

 何があったのか。

「遠距離から撃ってきた。おそらく大砲の類だろう」

 爆弾よりも、もっと遠くから狙えるもの。

 そう、伯母は言っているのだ。

 そんなことが出来るのか。

 だとしたら、急がなければあの屋敷が全壊させられてしまう。

 中には、大切な人たちがいるのだ。

 ドォォォォン!

 二発目が爆音が響いた。

 もはや、ただ外れることを祈るしかない。

「あの屋根の上だ!」

 桃も、見つけていた。

 大砲とやらは、とにかく音が大きすぎて、何発も撃とうものならすぐに場所を特定されてしまう。

 目星をつけた家へと駆け込み、階段を駆けあがる。

 平らな屋根へと続く梯子を昇ったら。

「……」

 火をくわえた男が、いた。

 その火が、彼の顔を薄暗く照らし出している。

 斜めに入った刀傷。

 それだけは、確認できた。

「ユッカス…」

 桃は、初めてその名を、本人の前で口にしたのだ。

 彼の側には、二人の子どもと二人の大人がいた。

 火を持つのはユッカスだけだったため、他はまったく見えない。

「今夜…全部失うのだ…全部、な」

 初めて、声を聞いた気がする。

 伯母も桃も、その冷たい声の粒を日本刀で切り裂くように駆け出していた。

 爆弾を、口元の火に近づけたからだ。

 出来れば生け捕りに。

 そうヤイクには頼まれていたが、とてもそんな余裕はない。

 二人とも、一瞬も迷わずに殺す気で飛びだしていた。

 伯母は、斬った。

 桃も、斬った。

 だがそれは──ユッカスではなかった。

 二人の子どもが、己の身を挺して彼を守ったのだ。

 崩れ落ちる二人を歯牙にもかけず。

 ユッカスは、伯母と桃めがけて爆弾を放り投げ終わっていた。

 あっ。

 間に、あわ──
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