ナンセンス!

2

「 そのへんに座ってて。 今、お茶、入れるから 」
2LDKの室内。
通された居間には、大画面の液晶テレビがあった。 作者は分からないが、ヨーロッパ辺りの風景を写実したと思われる、小さなイラストが壁に掛かっている。 リトグラフのようだ。 ティファニー風の、ステンドグラスを模したランプもあった。
さすが、大人の女性の、一人暮らしの部屋だ。 お洒落である。
蛍光灯ではなく、白熱灯を使用した間接照明が、一層、大人っぽさを演出している。
僕は少々、緊張して、ソファー前に敷かれたラグの上に正座した。
( 何で僕が、お説教されなきゃならんのだ? ボイスレコーダーか、何かに録音して、健一に聞かせてやりたいぜ・・・ )
やがて先生が、お茶を注いだ湯飲みを小振りの盆に載せてやって来た。
「 耳の痛い話しかもしれないけどね、健一クン・・・ 男の子なんだから、多少のわんぱくは、仕方ないわ。 でも、明らかに犯罪だと分かる行為は、あなたにも判断出来るでしょ? 面白半分でやったとは思うケド・・ 最悪の結果の場合、ごめんなさいじゃ済まないのよ? 」
ホンットに、そうですわ。 一発、バーンと言ってやって下さいよ、マジで。
先生は、湯飲みをテーブルに置くと、僕の前にあったソファーに座り、僕を見ながら続けた。
「 女子更衣室のノゾキとか、トイレのスリッパを、床に貼り付けたりとか・・・ そんなコトなんか、問題にならないくらい危険なコトしてるのよ? あなた 」
・・・友人として、恥ずかしいっス。
何なんスか? その、スリッパ貼り付けって・・・? ヤツの脳みそは、やっぱ小学生以下ですか? 入試、受けてないんスかね・・・?
とりあえず僕は、しょんぼりと下を向いていた。
先生は、湯飲みのお茶を一口飲むと、もう一つを僕に勧めた。
「 ・・・頂きます 」

しばらくの、沈黙。

何か、話さねばなるまい。 かすみが心配なのに、このままでは永遠に説教を聞かされそうだ。 何かこう・・ 先生に相談するような話題は・・・
「 ・・・ねえ、高田先生 」
「 いつもみたいに、美津子先生でいいわよ? どうしたの? 今日は何か、あなたヘンよ? 妙に大人しいわね 」
そりゃ、中身が違いますから・・・
「 実は、あいつ・・ いや、僕・・ いや、オレ・・ 進路で、悩んでるんです 」
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