ナンセンス!
サバラスが言った。
「 一分前! 」
かすみが、胸の前で手を組み、祈るようにしながら言った。
「 お願い・・ 戻って来て、みちる・・・! 」
すべては、あぶらすまし野郎に言ってくれ。 僕の力では、どうにもならん。
星野が言った。
「 象や鯨には、なるなよ? せめて、この部屋に入り切る大きさで、勘弁してくれ 」
ははは・・・ 凄いね、そりゃ・・・
ゴキブリになっても、殺虫剤をかけないでね? 飛んじゃうよ、僕・・・
サバラスが、言った。
「 30秒前! 」
まな板の上の鯉だ。
僕は、静かに時を待った。
「 ・・・ん? ちょっと待ってね 」
サバラスが、慌てて電子手帳を取り出し、ナニやら操作する。
・・・凄っげ~、不安をかき立てるような行動、取るじゃねえか、お前・・・! やめれ、そ~ゆ~の・・・!
「 危ない、危ない、はっはっは! もう心配ない 」
・・・ナニが危ないんだ?
心配するなと言われても・・ それを信用する要素が、一つも無いぞ?
訴え掛けるように、じっとサバラスを見つめる、僕。 その視線から逃れるかのように、サバラスは、僕から視線を外し、言った。
「 改めて、2分前! 」
おいっ! また、増えてんじゃんよっ! お前、テキトー言ってんじゃないのか? ホントに、大丈夫なんだろうな・・・?
「 間違えた。 26・・・ ん~・・ 28秒前! 」
・・・その、ビミョーな数字は、ナンだ? 取って付けたようじゃないか。 僕、やめようかな・・・?
「 5秒前! 」
・・・おいっ! イキナリ、5秒まで飛ぶんかよっ! 間はどうした、間は! お前、マジメに数えてるか? なあ? 急速に、不安が高まって来たぞ・・・!
「 5秒前! 」
なっ・・? 止まってんじゃねえか、おいっ!
チラリと、電子手帳を見る、サバラス。
「 5秒前! 」
さっきも言ったわ! それ。 合計10秒、不明瞭だぞ、おいっ!
・・・やめよう・・! イヤな予感がする・・・!
僕は、中止を求め、声を掛けた。
「 サバラス・・ 」
「 ゴオォ~ッ!! 」
また、お構いなしか~っ! この野郎ォ~ッ・・・!
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