ナンセンス!
愛しき、かすみ

1

下校時間。
サブが、車を回して来た。
「 ご自宅まで同行させて頂きます、姉御 」
そう言って今度は、龍二が、車に乗り込んで来た。
「 ちょっと、様子を見ておきたい人物がいる。 寄り道していいか? 」
僕が言うと、龍二は答えた。
「 構いませんよ。 でも、車からは、そんなに離れないで下さい 」
僕は、どうしても確認したかった。 入れ替わった、星野の様子である。
いつも、今頃の時間は、健一と共に、学校の帰り道にある、かすみの学校前まで行っている。 星野が僕の体でいるのならば、かすみの学校近くへ行けば、健一と共に会える可能性が高い。 ついでに、愛しいかすみの顔も見たいし・・・!
僕は、サブに言った。
「 多岐学園の、近くまで行ってくれ 」
「 ようがす! 」
・・・お前、江戸の下町育ちか?

大通りから、多岐学園の校門に続く広い歩道。
下校して来る生徒たちが、三々五々、歩いている。
僕は、少し離れた所に車を止めさせ、道の脇に立ち、僕や健一の姿を探した。
龍二が、僕の傍らに立ち、護衛している。
何か、アブない絵だ・・・ 借金取りが、対象者を待ち伏せしているようである。 道行く生徒たちも、不信そうに見て行く。
「 ・・ねえ、あの人・・・ 鬼龍会の星川さんじゃない? 」
「 一緒にいるの、内田 龍二よ、内田 龍二・・・! 」
「 えーっ? あの、人間凶器の・・・? 」
生徒たちのヒソヒソ話しが、聞こえる。
龍二。 お前、結構、人気者だな。
しかし、やっぱ、立っているのは目立ち過ぎる。 手前にある、コンビニでも行くフリをするか・・・
歩き始めた僕は、数メートル先に、健一の姿を発見した。
( いた・・! 僕だ! )
懐かしい! 元の僕が、健一と歩いている・・・! 横には、かすみの姿も確認出来た。
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