ナンセンス!
摩訶不思議生物 サバラス

1

家に戻ると、母が、空手の稽古をしていた。
「 きええーいッ! ずおりゃ、とおおォ~うッ! 」
その奇声に、ご近所が怯えていらっしゃるという事実を母は知らない。 どうやら今日は、台所で夕飯の支度をしながら、型の稽古をしているらしい。
「 はっ、ほっ、はっ、ほっ、何とっ、こりゃっ! 」
大根を切るのに、掛け声を掛けるな! 稽古するのか、メシの支度をするのか、どっちかにせえ。
「 ・・・あ、お帰り、みちる。 ありゃさァーッ! 」
ダシを鍋に振るのに、気合は要らん。 フツーにやれ、フツーに・・・!
「 みちるぅ~? あんたの部屋に、ヘンな人形があったけど・・ いつの間にあんなモン、買ったんだい? 」
「 ・・・・・ 」
僕は、二階の部屋に駆け上がった。
・・・いやがった! サバラスだ。
「 よう、お帰り、星川くん! 」
僕のベッドでくつろぎ、また茶などを飲んでいる。
「 ノンキだな、お前。 元に戻れる算段は、ついたのか? 」
制服からジャージに着替えながら、僕は尋ねた。
「 ダウンロードしたら、ハードディスクが、飛んでしまったよ。 今、マザーボードごと、交換しとる 」
・・・ヘンなプログラムごと、ブッ込んだんと違うか? アップデートくらい、してからやれよ。 たまには、デフラグもせえ。 機能限定でしか、立ち上がらなくなるぞ?
僕は言った。
「 とにかく、早く戻してくれ。 それで、復旧のメドは? 」
「 皆目、見当がつかん 」
・・・あっけらかんと、答えてくれるじゃねえか、お前。 ヤル気なしか?
徐々に、『 殺意 』が芽生えて来た僕は、サバラスを摘み上げると、脅すように言った。
「 事と次第によっちゃ、てめえ~・・・ 出るトコ出ても、いいんだぞ? おお? お前らの存在を、洗いざらい喋ってやる・・・! その際、オレの進退にも、影響は出るだろうが、構うもんか。 気を使って生活するよか、よっぽど、清々すらァ・・・! 」
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