ナンセンス!
超えてはならない、一線

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「 名前が判明しました。 その、眉毛の無い男は、瀬川 幸治と言う常盤の二年生です。 組頭代理ですね 」
部室にいた僕に、二見ちゃんが報告しに来た。
「 瀬川か・・・ あとの二人は、分かるか? 」
僕の問いに、二見ちゃんは、ファイルを見ながら答える。
「 おそらく、一年の篠原と三宅でしょう。 同じ中学の後輩です。 背の高い方が篠原です 」
あの、パイナップルか・・・
二見ちゃんは、続ける。
「 間違いなく、常盤の生徒です。 会長の、矢島の信頼も厚いはずなのですが・・・ クーデターですか・・・! 所詮、ウチのように、一枚岩じゃなかったという事ですね 」
ファイルを閉じ、それを僕に渡す。
目を通しながら、僕は言った。
「 連中は、近いうちに、必ず連絡して来る。 美智子とも相談し、早急に対応出来るよう、準備しておいてくれ 」
「 かしこまりました。 うまく行けば、海南同様、常盤も壊滅出来ますね・・・! 仙道寺も、単独では、こちらに手を出して来る事は無いと思います 」
「 そういう事だ。 力の均衡で、平和を維持するのだ。 いわば、冷戦状態だな。 傷付く者が出ないだけ、無益な報復連鎖を避けられる。 時期が来れば、講和の道も開かれるだろう・・・ これが、あたしの作戦だ。 武蔵野鬼龍会は、そのリーダーシップで、確固たるイニシアティブを取るのだ 」
「 素晴らしいです、会頭・・・! お側で仕えられる私は、何て、幸せなのでしょう! 」
二見ちゃんは、感動していた。
心なしか、目がウルウルしている。 僕は少々、照れ臭くなった。
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