治験
俺の質問に、遠藤さんは見とれてしまうような可憐な微笑みを浮かべた。

「試験は国の基準を満たした医療機関で行われます。それは勿論当社も例外ではありません。人体に害を及ぼすような危険な薬品は、一般のアルバイトの方に投与する事はございませんし、当社でも繰り返し危険性がないかどうかテストを行っておりますのでご安心下さい」

今回試す新薬は、実用段階寸前の信頼のおける薬品。

ほぼ製品化したも同然の薬品なのだという。

「ですから正直に申し上げれば、今回の治験のアルバイトは…」

遠藤さんがこっそり俺に耳打ちする。

「本来もう必要のない治験といっても差し支えありません。村上様は、ただで報酬を貰うだけといっても過言ではないのです」

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