姫様にkiss

姫様と過去




「そ。違う。」



当然のことのように、横で言ってのける朔真に、あたしは、状況が飲み込めなくて、ただ呆然とするだけだった。



違うって…



確かに朔真と会ったのは、あの時が始めてだった。



それとも、それ以前に、あたしが覚えてないだけで、何処かで会ってるの?



「…と言っても、姫は覚えてないだろうけど。確か……そうだ。姫が中等部2年の時。」



あたしが中等部2年の時……









「“君は天使のように優しいんだね。”」



“天使”



そのフレーズにどこか懐かしさを覚えた。





「…あ」
「思い出してくれた?」



朔真が嬉しそうにはにかむ。



「あの時の…」
「そう。あの時の。」



思い出した。



あの時の。









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