白球追いかけて
 試合当日。
 その日は夏にもかかわらず、カラッとした天気だった。
 グラウンドまでの道程は、音楽を聴いて気持ちを高ぶらせた。
 グラウンドに着くと、風が強く、砂煙が舞っている。緊張した気持ちを、スパイクの紐をきつくしめることでまぎらわせようとした。足の甲に違和感を感じたが、気は引き締まった。
 軽くグラウンドの端を走り、ストレッチをする。屈伸をすると、グラウンドを見る目線が平行に上がったり、下がったりする。
 膝を曲げて、伸ばしたとき、その視界にシータが見えた。船に乗っているみたいに揺れて見えるが、あれは確かにシータだった。
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