誘拐 ―おまえに決めた―

「はあーーー」


指先が冷たくて息を吹きかけるが、口から出るその空気もまた温めるには十分ではなかった。

こんな薄着じゃ寒くて当然。



これから、どうしよう。

雨が止んだら。

朝日が昇ったら。

それまで、生き延びられたら。



あの部屋にいた時、私はなぜか心の穏やかさを感じていたのではないだろうか。

嘘吐きと嘘吐きのかりそめの平穏。


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