誘拐 ―おまえに決めた―
私の手を握ったあの大柄の男。
恐怖すら感じる端正な顔立ち。
圧倒的な存在感。
「目が覚めた? 薬、あんま効かなかったみたいだね」
ニッコリと笑う。
それはもう上品な笑顔で。
こんな状況でなければ、100人中100人の女の子はこの男に恋をするだろう。
なんて憎らしい外見。
犯罪者、なのに。
いや、むしろこんな外見なら銀行強盗なんかするより、モデルかタレントにでもなった方がよっぽど稼げる。