誘拐 ―おまえに決めた―

続けてリクに咥えられたパンの欠片が、

私の唇に当たった。



首を横に曲げ、拒否する。




「ダメだって。人質なんだから。

言うこと聞いてくれなきゃ犯人は困る」



悪戯っぽく笑うリクを見ていると、これが現実なのか分からなくなる。



「食べなきゃ、元気でないよ」

「元気なんて出ない。誘拐されてるんだから」

「そりゃそうだ」



何考えてるの?こいつ。



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