天国への階段 ―いじめ―
パタパタと足音が聞こえてきた。
次いで、英子の声が女子トイレに飛び込んできた。
「斉藤、あんたってほんとバカなヤツ。
頭冷やしといたほうがいいよ」
「英子」
萩原英子の名を呼んだのは、里島亜未だ。
「亜未、ホース」
私は個室のドアから離れた。
きっと、足癖の悪い英子の蹴りが入って、
後から水が降ってくるだろう。
シャア……と、予想通り水が降ってきた。
秋の深まる頃だ。ひんやりと冷たかった。
どうやら、蹴りの心配はなさそうだ。