天国への階段 ―いじめ―




「ねえ」
 


もう一度呼ばれた。



「ここんとこ毎日、そうやって階段上ってるでしょ?」
 


一瞬、目を泳がせた。
まさか、毎日見られていたなんて……。


相島さんに、どうやって話すべきか。
誤魔化すか、断ち切るか、正直に話すか……。

何が一番いいのかわからず、
戸惑ってしばらく黙りこくっていると、相島さんは、

「言いたくないなら言わなくてもいいよ。
無理に聞こうとはしないから。
それより、あなたの名前は?
私の名前は相島まりあ。二年一組」
と言った。



「斉藤……海結。二年四組……」
私の声は小さかったけれど、階段なのでよく響き、相島さんの元に届いた。



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