19の夏~私の愛した殺人鬼~

 パニックに陥ったように悲鳴を繰り返す紗耶香に、幸也は唖然とする。


 一方、人殺し呼ばわりされている当人は表情一つ変えず、その様子をただ見ているだけだった。


「おい、落ち着けよ。人殺しってなんだ?」


 幸也が、紗耶香の肩を痛いほど掴み、落ち着かせようとする。


 紗耶香は小さく震えながら、

「昨日この人があの場所にいたのよ。

お姉ちゃんを殺した犯人よ!」

 と、再び叫ぶ。


ダメだこりゃ。


 幸也が手におえない、と軽く肩をすくめて、ネコを見る。


 ネコは軽くため息を吐き出し、ようやく口を開いた。


「お前は何か勘違いをしている」


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