19の夏~私の愛した殺人鬼~

「ねぇ、沙耶香知ってる?」


 栗田は、なぜか両手に黒い皮の手袋をはめていた。


「オルフェウス、ギシリア神話の神の話しを」


「……知らない」


「マクベスを知っているから、話しができると思ったんだけどな」


 栗田は残念そうにそう言い、皮手袋の手を握ったり開いたりした。


 その度にギュッギュッと皮の鈍い音が聞こえてきて、沙耶香は顔をしかめた。
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