ロールプレーイング17
「うまいだろ!うちのカツ丼。」
 中から爺さんが顔をだして僕たちに言った。
「おっちゃんのカツ丼は世界一だよ!っな一。」
 僚介が元気よくそう言った。
 僕はその時、うなずくことしかできなかったけど、本当にそのカツ丼は、世界一の味だった。

 


 それから僕はあの〝みどりのオアシス〟に行く度に、あの三階の窓を見上げるようになった。僚介は時々、いつもの片足を投げ出す危なげなポーズでタバコを吸っていたし、僕らは約束をするでもなく、自然と会い会話をするようになっていった。
 昨日僕はこんな本を読んだとか、僚介が野良犬に噛まれそうになった時の話だとか、ここに僚介が引越して来る前に住んでた町の話だとか、今度隣町にでっかい駅ビルが建つらしいとか、、、。くだらなく、だけど僕らにとっては〝特別な話〟をゆるゆると語り合ったり。昼時には和みにも頻繁に行くようになった。
 僕はこの公園の名が〝みどりのオアシス〟なんだ、と僚介に教えた。僚介は始めバカにするように笑って見せたけど、実はその名を結構気に入っているようだった。
 たわいもない会話の中で、もし僕に友達がいたらこんな感じなのかな?って何度か思うことがあった。いやこれが友達って物なんだって思っていたのかもしれない。僕らはお互いなんでも話せる仲って気になってた、だけど僚介には僕にはまだ打ち明けていない、内に秘めた密かな思いがあったんだ、だけどこの時の僕にはそんなこと知る由も無く、ただ僕と僚介は同じ場所に立っているものだとばかり思っていた。
心の中を覗いて見られるメガネがあったら便利だね。なんて歌ずっと昔に歌ったことがあった、自分の心の中を見透かされたら、かなり厄介だなってあの時は思ってたけど、だけど今僚介が本当に心の中で思っていることが、口にしなくても解ったらいいな。なんて思ったりもした。一瞬こんなこと思うの僕だけかなって思ったけど、やっぱりこの世界に言葉が生まれたわけは、誰もがお互いの心の中をしりたいって思ったからこそなんだろう。
世界には数え切れないぐらいの哲学者がいるけど、その答えを導きだした時僕はそのなかの一人になったみたいな気分になた。

< 17 / 110 >

この作品をシェア

pagetop