♂GAME♀

『何をしているのですか?』

写真を見つめる私達の背後から、一人の女性が忍び寄る。

……園長だ。

『その写真に、ご用かしら』

優しい笑顔は前と同じ。

だけど、前回とは状況が違う。
私達は、全てを知った上でこの写真を見に来た。

招かれた時わけでもなく、ただ勝手に入ってきた。

『ごめんなさい。 どうしても、この写真が見たくって……』

申し訳なさに直視できなくなって、目を伏せる。

『そう…… 前回見た時に気付かなかったのに、どうして?』

それはきっと、中林社長と輝の容姿の事だろう。

園長は、諦めたように苦笑してみせるとイスに腰掛けた。

『輝くんはね、産まれた時から父親がいなかったんだ』

それは輝から聞いた事と少し違ってた。

確かに父親が出産に対して反対してたのは事実だった。

だけど輝が生まれて、それからずっと、お母さんは輝のために働いてたんだって。

輝がいらないから施設に預けたわけじゃないんだよ。

『4歳で母親が亡くなって、一度は中林さんが引き取った。 中林輝にするつもりだったんだろう』

ねぇ、輝……
輝は前に言ったよね。

「望まれない存在だ」って。

そんな事ないよ。
ちゃんと愛されてるよ。

『ただ、あの時の中林さんにとって、スキャンダルだけは避けたかった』

ようやく見えてきた成功を、マスコミに潰されたくない。
中林社長は永い間、一人で悩んでいたそう。

『祖父の代から受け継いできた小さな町工場が、大企業になる。 中林さんはね、今まで一緒に頑張ってきた従業員達に迷惑はかけたくなかったんだよ』

だから、スキャンダルになる輝を施設に預けた。

そういう事なのね?

『あの人は、輝くんが幸せであるようにと莫大な金額を寄付してくれたんだよ』

そう聞いて、気付いた事がある。

この小さな養護施設に、何であんな凄い人が寄付をしたのか……

それは輝がいたからだ。
自分の息子がいるから、寄付したんだ。

考えすぎかもしれないけど、他の施設にも寄付したのは、輝の事をカモフラージュするためなんじゃ……

それは流石に考えすぎかなぁ……?
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