1970年の亡霊
最後の銃弾
 官邸を出た直後から自分の車がつけられている事を、曽根崎は気付いていた。

「おい、後ろの車をやり過ごせ」

 命じられた運転手はスピードを緩めた。

 後ろの車も同じように徐行した。つけている事を隠さない。

「そこの交差点で止めなさい」

 運転手は交差点の手前で車を左へ寄せ、停車させた。真後ろについていた車は、ゆっくりと曽根崎の車を追い越し、いきなり前を塞ぐように割り込んだ。

 つけていたのは一台だけではなかった。前方を塞いだ車の他に二台の車が、右横にぴたりと停車し、残りの一台がバンパーすれすれに停まった。

 停車した車からばたばたと人間が降りて来た。

 曽根崎が意外だと感じたのは、降りて来た人間の中に女が居た事であった。

 その女が男達の輪の中から進み出て、後部座席の窓ガラスを叩いた。

 曽根崎はそれを無視するかのように、黙って前を向いたまま腕を組んでいた。

 助手席に乗っていた秘書官が、曽根崎の方を振り返りながら、目で指示を仰いだ。

 軽く頷いたのを確認した秘書官が自ら応対すべく車を降りた。

「曽根崎政務次官のお車ですね?」

 強張った表情の女が尋ねて来たので、

「そうだが、君達は?」

 と聞き返した。

 女は凛とした声で、

「警視庁サイバーパトロール課の三山と申します。曽根崎次官に任意同行を願いたいのですが」

 と言った。





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