甘酸っぱい彼
[百季ver]
                                        向井君が・・・あたしを好きって言った・・・。冗談だよね?

戸惑いを隠しきれないままでいると向井君の顔が近づいてきた。向井君の匂いがあたしの鼻をおかしくする。向井君は多分、香水を付けてるんだろう。向井君との顔の距離が徐々に近づいて・・・、向井君はきっと・・・キスしてくるってあたしはわかった。
「む・・・向井君・・・?」
「・・・。」
向井君は何も喋らない。このままでは向井君にキスされてしまう。あたしは向井君にキスされて幸せ? 向井君はモデルとして人気があるし、あたしだってカッコいいなって思う。でも・・・、キスされて・・・あたしは・・・幸せだって思うかな・・・? きっと・・・思わない。キスされるって思うと、胸の中で何かがざわめいてる。なんだろう・・・。なんだかいけないよって・・・、キスしちゃいけないって言われてる気がするんだ。
あたしはその瞬間、向井君から顔を逸らした。
「向井君・・・ごめん。あたし・・・好きって言われて嬉しかった。・・・でも、違う気がするの。」
あたしは知らない間に言葉を発していた。胸の中が破裂しそう、緊張のせいで・・・。
「向井君にはもっと可愛い子の方が似合ってるよ。」
「相沢。俺、そんな事関係ないよ? お前の事、マジで好きだから。」
「ありがとう。でも・・・あたし・・・。」
                                        そう、今気がついた。今わかった気がする。あたしは好きな人がいる。勘違いかもしれないけど・・・、あの人の事が気になるから・・・。

「あたし、他に好きな人いるんだ。」
あたしはそう言うと屋上を後にした。


「俺、諦めねーよ。いつか・・・、振り向かせてやるよ。」
向井君はあたしが屋上のドアを開けた瞬間、あたしに小さく呟いた。
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