This is us



「やっぱり蓮ちゃんも男なのね」


「やっぱりって意味分かんねぇし」


「…てか、そんなに気になるなら」


そう言って佐々木が俺を見る。


「話しかけりゃいいんじゃない?」


「お前なぁ…」


隣にいてて分からないのかよ。

佐々木はやはり気付いていないみたいで、“ん?”と目を見開く。



「避けられてるんだよ…」

「誰に?」



そこまで言わせるか。

ムッとした表情で佐々木を見ると、“あぁ”と納得したように鼻を鳴らした。



「確かに。彼女の行動は、妙だね」


「……」


どうすりゃいいんだよ。



頭を抱えて悩んでも一方通行で。



「とか言って、本当は女子トイレ入りたかったんだろ?」


そう言って、ニカッと笑うこの猿の頭を思い切り叩いた。


「いってー!もう、暴力的なんだから」


「お前に言った俺が馬鹿だった」



あー…なんか、考えてるとぐるぐるしてきて目が回りそうだ。



話しかける…か。


ざあっと灰色の空から降る雨を、眺めながら。


こんなにも、彼女に思考を支配されるなんて…思ってもみなかった。


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