This is us


「…んで…何で?!そんな奴のどこがいいのよ」


香川さんはその場で泣き崩れて。
私の胸ぐらを掴んでいた子が、香川さんの肩を抱いた。

それって、本当の友情なんだろうか…

私は悠長にそんなことをぼんやりと考えていた。

「てめぇらには関係ねぇ。今度さとりに手ぇ出したら…」

「いいよ。結城くん、もう大丈夫だから…」


傷付け合うなんて、しなくていい。
そこには憎しみと傷跡しかのこらないって、分かったから…。


「行くぞ。いつまでもこんなとこにいたら、腐る」

結城くんは私の手を取り、歩き出した。

私は後ろ髪を引かれるような気持ちで、その場を後にする。

このまま、行ってしまっていいのか。
きっと好きな人にあんな事を言われてしまったら…

だからと言って、私に何か出来るわけではないけれど。

痛いほど、思い知った。

私が彼と付き合う事で、傷付く女の子がたくさんいる。

誰かの不幸の上に成り立つ幸せなんて、すぐに崩れ去ってしまうから。

私は胸の奥がモヤモヤでいっぱいになって、出口のない迷宮に入ってしまったような不安が襲った。


.
< 262 / 388 >

この作品をシェア

pagetop