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Side Ren



「結城!」

ちょうど靴を履き替えて帰ろうとした時だった。

振り返ると、さとりの友達の松川が息を切らして立っている。

「…どうした?」


「…りが、さとりが、香川って女に呼び出されてて…」

途切れ途切れに、松川は肩で大きく息をしながら言った。

「さとりが?!どこにいる?」

「多分…特別棟の、裏」

俺はすぐに走り出す。
胸が張り裂けそうなくらい、痛い。

俺が、俺が、守ってやらなきゃいけない。

なつめの時のようにはさせない。

俺のせいで…


「結城くん…?」

さとりの声ではっと我に返った。

球綿をピンセットで掴んだまま、俺は回想していたみたいで。
さとりは心配そうに首を傾げて俺を見ていた。

「悪りぃ…ボーッとしてた」

「ううん、ありがと…」

消毒液に浸して、手の甲にそっと乗せる。

「い…たた…」

「ちょっと我慢しろ」


綺麗な白い手。
俺の半分くらいしかない、小さな手。

擦り切れて、赤く腫れていた。


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